2021-01-01から1年間の記事一覧

21/11/19

その人が昨日何を着ていたか、ちゃんと思い出せなくて、それがどういう意味かを考えていた。込められた意味があればいいと思うようになったのはいつからだろう、もう惰性で思っているのかもしれない。電車の窓から見える風景は生活を忘れた抽象画になって、…

口をゆすぐとき

もしもいま私が誰かの母親だったらその子に心配かけてしまうだろうな、と思った。母親が普通の人間であることを忘れないようにしたいと思っていても、どこかで揺らがないでいてほしいと願っていて、むかし母が嘔吐している気配で目が覚めた深夜や苛つきなが…

おじいちゃんの話

ミサが病気になった。最近は夏バテして食欲がないと言ってすぐに自室へ行ってしまうし、夜中に何度も目を覚ましているようだった。頭痛薬の空箱が捨てられているのを見つけた日、あなたはミサに一度病院に行くように言っていたのだった。ミサが医者から聞い…

不透明・白黒

からだが固まる気配がした。金縛りのときに空を飛ぶイメージをするとその通りに飛べるという話を聞いたので、実践してみようと、まずは全身を意識した。すぐに身体はこわばり、動けなくなる。上に、上に、浮かぶ、ずれる、ずれている。飛んだあとってどうな…

黒い犬と

・例えばそれぞれに決まった寿命があるとして、どこまで生きてきたと思う? 私たち80とか100まで生きられるかな。生きられそう。でも実はもう人生半分過ぎていたりして。あと8分です、って余命宣告されるコントあったよね。私はあと何分なんだろう。君は、あ…

他人として

嫌な目をしている。 その人は卒業アルバムをめくって、生徒の顔と名前をひとりひとり確認するように見ていく。このクラスではこの子が人気そうだけどあたしはこっちの子のほうが好きだなあ、この子はサッカー部って感じの顔している、あれ、この子、あなた小…

21/07/08

好きになりそうなバンドを見つけた。怖いって書いたら怖くない気がしてきた。雨の日に部屋の電気をつけること、下の句を答えよ。繰り返してもいいと思える日はあるだろうか。人差し指の外側が切れた。トーストから落ちたジャムが温かくてどきどきした。電話…

bhaja

あのバス停の前、美容室だと思っていたけれど本当は外国人の家族が住んでいたのですね。隣の隣の町の高校へ通うあの人が7時半の便を待つバス停の前。前というか横というか。なんとなく避けていました。お休みの日のお昼ごろ、久しぶりにそこの道を通ったら美…

五月

乾いたパンを押し流す牛乳 光 白い朝に正しいシャツを着てその素直な新しさが恥ずかしくなってごまかしましたが気がつきますか 見つけてしまった提供された断片を拾い集めて扉や窓を思い浮かべていることを知った いらない 許されたい 心許ない毛先では庇う…

ため息

遠山さんは言う。 「くだらないでしょう。どうして私に言うの、って思うときもある。それくらい自分でやればいいのに、とかね。でもね、いいの。私たちはずっとどこまでも他人だから、せめて彼にとって一番近い他人でいられるようにと思って、私が好きでやっ…

午後

お昼寝に付き合ってくれ 畳んだままの布団 郵便屋さんのバイクの音 目を覚ましたら少し日の傾いた夕方で 寂しくならないように麦茶を飲んで その正しさでごまかして 寝起きの怠さが残る身体でスーパーか銭湯か居酒屋まで歩きたい 春の柔らかい風を感じながら…

第一段

春は夜。あらゆることから匿ってくれる夜。少しぼやけた月が美しく、桜の花は白く光る。もうこれからは凍えないで散歩ができる。 夏は夕方。余韻のような夕方。七時頃まで空は明るく、紫やピンクの夕暮れは世界の終わりのよう。暑すぎた日には夕立が降り、街…

21/03/24

うららか、副交感神経に悩まされ、他人行儀の二人称があるらしい通知欄 サインペンで紙に書いたら切実さが無くなりました 全然真面目にできていないから、あの子の運も願いも努力も使い果たして、ぐちゃぐちゃのパフェを舐めるのだろう それでもいいか 猫の…

21/03/14

信じられなくなるときがある。もしかしたら私はいま煙に包まれているのではないか。本当は小学五年生の月曜の夜の空想ではないか。もしかしたら、本当は、もう死んでいるのではないか。どうしてここにいるのかわからなくなるときがある。急にいま・ここに飛…

女たち

こんな夢を見た。 母の部屋の壁の色。ベッドのなかに男とふたりでいた。彼の身体はどこをさわってもすべすべしていた。男が望んでいることに、そしてそれが本心であると信じられることに、安心した。どうなったか覚えていないけれどなぜか、その状況に至った…

21/02/20

意味なんて無い。無くても大丈夫だった。大丈夫になった。なった? みかんを食べましょう。いちごに圧され気味のみかんを救い出すかのように買ってきたけれど、もう次の冬まで食べないかもしれないからとも思っていて、何にせよ可哀そうなみかんだった。みか…

調理室

こんな夢を見た。 森の奥。まるで昨日の夢の続きのように、高校時代のクラスメイトと一緒にいる。森の奥にはガラス張りの建物があった。そこはイベントで使える共用棟のような建物で、一階にふたつの調理室があった。「何でも作れるじゃん!」と何もしなさそ…

寝支度

こんな夢を見た。 敷いた布団にシーツをかけるのをKが手伝ってくれた。何も言わずにでも丁寧に、くるんでくれた。何か話してよ、と言えなかった。シーツをかけたらKはどこかへ行ってしまった。広い部屋に大勢で泊まっていた。中学時代の友人や高校時代のクラ…

鬼の春

「うちに鬼は来ません。我が家にとって2月3日はめでたい日なのだから」 今年の節分は2月2日だったけれど、鬼は来ただろうか。来ていたのかもしれない。豆を撒かなかったら鬼は居座ってしまうのだろうか。 節分は文字通り季節の分かれ目、2月の節分は立春の前…

2021年2月の目標

・やることと時間を決めて動く ・姿勢良く過ごす ・読みかけにしている本を減らす(8冊ある) ・水を飲む ・人と会ったり話したりする機会を無駄にしない

しりとり「す」攻め覚え書き

スライス・スパイス・スイス・スクラロース・スフィンクス・ステンドグラス・スライドガラス・スコーパス・煤・スペース・スムース(△)・スーツケース・スカーフェイス・スローダンス スヌーズ・寿司酢・スムーズ アイス・椅子・臼・エース・雄・カラス・鱚…

寝息

それは透明だけど透明じゃない。 彼女の寝息には色がついている。空気よりも少し重たくて、ベッドを滑り落ちてしばらく床の上に漂う。 私はこの不思議な現象をたまたま見つけた。話し込んでいたら終電を逃して、なんとか歩ける距離にある彼女の部屋に泊めて…