切火

望遠鏡、お説教、透明度、ご名答。桃源郷金平糖? 要検討、としたってどうしたって負け。ほうけていたら切り傷のような二月は鮮烈、しゃらしゃらと鳴るゼムクリップの冷たさに救われて、いくつもの正しい曇り空、スノードームのその目を嫌う。そうすれば自分を簡単に守れるような気がした。
「死ね死ね星人が来るんです」とその人が言った。「耳元でね、死ね死ね死ねって囁く声が聞こえるんです。それで、ああ来たな死ね死ね星人、って」そうして再現された囁き声の細やかな息を、何度も頭の中で反芻した。文字にするときっと8pt.くらいの、小さな呪いの群れが、その人を襲う。カフェ・ベローチェの6人定員の喫煙ブースはいつだって満員で、自閉式ドアは忙しなく音を立てる。
なけなしの感嘆符、サテライト、ばたんきゅー。音のない暗闇を周回軌道に乗って進む衛星が、もしも寂しがっていたら私はどうしよう? 月に降りた探査機は太陽を浴びて働き、夜が来たので再び休眠に入った。冷たい岩の上で広がる大いなる眠りの中では、金平糖やゼムクリップやスノーフレークや小さな呪いの文字それらすべて肩に散る火花と見間違う。